宇宙の引き出し
アカシックレコードという言葉が好きだ。
簡単にいうと「この世のすべての記録」という意味で、詳しいことは神様系の学問の話になるみたいなのでよく理解しきれていない。
小さい頃、よく「今ここでこれを考えている、そのことを何年か後には忘れてしまうのか、仕方ないけど嫌だ」と一人でもやもやと寂しさみたいなものを感じていたので、自分も他人も覚えていない記憶が保存されているなら安心する。
あとやっぱりよく考えていたことのはずなのに具体的な "ここ" も "これ" も覚えていない。
多分幼稚園の頃スイミングスクールで泳いでいた時に考えていたことなんだろうと思う。
いくらSNSが普及して、自分の行動を逐一全世界に発信するようになったとしても、すべての記憶ではない。
おととい友人と喫茶店で飲んだストロベリーティーの熱さ、
きのう思いがけずだらついた飲み会の二次会でカラオケに入り浸った後のパーカーのにおい、
さっきの母の「ご飯できたよ」に対して「はーい」と「わかった」のどっちの返事をしたかなんて誰も覚えていない。
一昨年亡くなった叔母さんはマグカップと電子レンジで作るカップケーキを作ってくれた。
パッケージにはピカチュウが描いてあって、イチゴ味だった。
大学2年生の夏にしょうもない失恋をして新宿の安居酒屋でどうしようもない酒を飲んだ。
トイレに籠って息も絶え絶え、見上げた先のピースボート世界一周の旅。
市民プールで泳いだ後に母から買ってもらったSEVENTEENアイス。
大人ぶってそんなに美味しいと思ってないのに抹茶味のアイスコーンを食べた。
別の日には自販機でジュースをしたら商品入れ換え中で、いい子に待っていたらおじさんが入れたてのCCレモンを一杯くれた。
炭酸が苦手だったが美味しく飲んだ。
どれもこれも、すべてアカシックレコードに保存されていればよいと思う。
死んだ後に入れるでっかい図書館でそれらを閲覧できたらいいのにと心から望む。
あとシアタールームで自分の人生を映画化したDVDを鑑賞したい。
「やっぱ原作の大学生編が一番面白いわ。社会人編は登場人物の魅力が描写できてない。実写化はワイヤーアクションが露骨だしオリジナルヒロインが蛇足」とか講釈垂れたい。
飼ってたハムスターに会いたい。